令和7年度上期理論 問1
問題文
電圧 $V [\text{V}]$ に充電された静電容量 $C, [\text{F}]$ のコンデンサと全く充電されていない静電容量 $2C , [\text{F}]$ のコンデンサがある。これら二つのコンデンサを並列に接続したとき、これらのコンデンサに蓄えられる全静電エネルギー $[J]$ の値として、正しいものは次のうちどれか。
選択肢
1. $\dfrac{1}{9}CV^2$
2. $\dfrac{1}{6}CV^2$
3. $\dfrac{2}{9}CV^2$
4. $\dfrac{1}{3}CV^2$
5. $\dfrac{3}{8}CV^2$
解説
まず状況を整理します。
容量 $C$ のコンデンサに電圧 $V$ が加わっており、その初期電荷は
$Q = CV$
です。一方、容量 $2C$ のコンデンサは全く充電されていないので、初期電荷は $0$ です。
この二つを並列接続すると、両者は**同じ電位差**を共有することになります。したがって、電荷保存の原理を考えれば、接続後の全電荷 $Q_{\text{total}}$ は
$Q_{\text{total}} = CV + 0 = CV$
のままです。
次に、並列接続したときの合成容量を求めます。並列の場合、合成容量は
$C_{\text{eq}} = C + 2C = 3C$
です。
接続後の両端電圧を $V’$ とすると、
$Q_{\text{total}} = C_{\text{eq}} V’$
$CV = 3C V’$
$V’ = \dfrac{V}{3}$
となります。
それぞれのコンデンサの電荷を確認します。
* $C$ のコンデンサ: $Q_1 = C \cdot V’ = C \cdot \dfrac{V}{3} = \dfrac{CV}{3}$
* $2C$ のコンデンサ: $Q_2 = 2C \cdot V’ = 2C \cdot \dfrac{V}{3} = \dfrac{2CV}{3}$
和を取ると $Q_1 + Q_2 = CV$ となり、電荷保存も確認できます。
次にエネルギーを求めます。静電エネルギーは
$U = \dfrac{1}{2} C V^2$
で表されます。したがって、
* $C$ のコンデンサのエネルギー:
$U_1 = \dfrac{1}{2} C \left(\dfrac{V}{3}\right)^2 = \dfrac{1}{2} C \cdot \dfrac{V^2}{9} = \dfrac{1}{18}CV^2$
* $2C$ のコンデンサのエネルギー:
$U_2 = \dfrac{1}{2} (2C) \left(\dfrac{V}{3}\right)^2 = C \cdot \dfrac{V^2}{9} = \dfrac{1}{9}CV^2$
全エネルギーは
$U = U_1 + U_2 = \dfrac{1}{18}CV^2 + \dfrac{1}{9}CV^2 = \dfrac{1}{6}CV^2$
となります。
よって、正解は **(2) $\dfrac{1}{6}CV^2$** です。
この問題の本質は「電荷保存」と「並列接続後の電圧変化」を正しく把握することです。最初に $C$ に蓄えられていたエネルギーは
$\dfrac{1}{2} C V^2$
ですが、接続後は $\dfrac{1}{6}CV^2$ に減少しています。差分のエネルギーは、接続の過程で回路内で熱や電磁波として失われます。このように、コンデンサを接続するとエネルギー保存は必ずしも成立せず、電荷保存がキーになります。
このパターンは典型的な「電気回路におけるコンデンサの合成とエネルギー計算」の問題であり、基本的な理解を深める上でとても重要です。