演算増幅器(オペアンプ)の基本特性と直流増幅回路に関する問題
問題文(要約)
本問題は、演算増幅器(オペアンプ)の特徴に関する正誤判定と、2つの直流増幅回路(図1・図2)における出力電圧を求める問題です。
(a) ではオペアンプの一般的な特徴を列挙し、その中で誤っている記述を選びます。
(b) では図1と図2の直流増幅回路を用いて、与えられた入力電圧 \( V_{i1} = 0.6 \mathrm{V} \) と \( V_{i2} = 0.45 \mathrm{V} \) に対する出力電圧 \( V_{o1} \), \( V_{o2} \) の正しい組み合わせを選択します。
重要度:必ず理解
オペアンプはアナログ回路の中心的存在であり、直流増幅回路の基本動作は頻出です。必ず押さえておくべき重要テーマです。
出題意図とポイント
- (a) オペアンプの理想的特徴(差動増幅回路、高入力インピーダンス、直流増幅可能、非常に大きな増幅度など)を正しく理解しているかを問う。
- (b) 基本的な反転増幅回路・非反転増幅回路の式(ゲイン計算)を用い、正しい出力電圧を求める力が問われる。
- 非反転増幅回路のゲインは \( 1 + \frac{R_{f}}{R_{\text{in}}} \)
- 反転増幅回路のゲインは \( – \frac{R_{f}}{R_{\text{in}}} \)
正答番号:
(a):3番が誤り
(b):2番( \( V_{o1} = 6.6\,\mathrm{V}, \; V_{o2} = -3.0\,\mathrm{V} \) )
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
- オペアンプの理想的特徴
- 2つの入力(反転端子・非反転端子)と1つの出力端子がある
- 差動増幅器であり、入力端子間の電位差を大きく増幅する
- 入力電流は理想的に 0(入力インピーダンスが極めて大きい)
- 直流から高周波まで幅広く増幅可能(実オペアンプは帯域に限界あり)
- オフセット電圧は理想的には 0(実際には小さいオフセットがある)
- 開ループ増幅度(ゲイン)は非常に大きい(理想的には無限大)
- 非反転増幅回路のゲイン
\[
G_{\text{non-inv}}
= 1 + \frac{R_f}{R_{\text{in}}}
\]
- 反転増幅回路のゲイン
\[
G_{\text{inv}}
= – \frac{R_f}{R_{\text{in}}}
\]
STEP2. 数値を代入して計算
(a) オペアンプの特徴
- (1) 2つの入力端子(反転・非反転)と1つの出力端子がある → 正しい
- (2) 直流増幅ができる → 正しい(実際には DC オフセット等あるが理想上は問題なく増幅)
- (3) 入力オフセットバイアスが大きい → 通常は「小さい」が正しい特性。ここが誤り。
- (4) 差動増幅回路である → 正しい
- (5) 増幅度(開ループゲイン)が非常に大きい → 正しい
よって、(3) が誤りです。
(b) 2つの直流増幅回路
- 図1:
与えられた抵抗比などから、非反転増幅回路の構成(入力がオペアンプの + 端子)と判断できる。
ゲインは
\[
G_1 = 1 + \frac{100k\Omega}{10k\Omega} = 1 + 10 = 11
\]
入力電圧 \( V_{i1} = 0.6 \mathrm{V} \) を増幅すると、
\[
V_{o1} = G_1 \times V_{i1} = 11 \times 0.6 = 6.6\,\mathrm{V}
\]
- 図2:
抵抗の接続から考えると反転増幅回路とみなせる構成になっている。
ゲインは
\[
G_2 = – \frac{200k\Omega}{30k\Omega} \approx -6.67
\]
入力電圧 \( V_{i2} = 0.45 \mathrm{V} \) を増幅すると、
\[
V_{o2} = G_2 \times V_{i2}
\approx -6.67 \times 0.45
\approx -3.0\,\mathrm{V}
\]
よって、\( V_{o1} = 6.6\,\mathrm{V} \) と \( V_{o2} = -3.0\,\mathrm{V} \) の組み合わせが正しいことになります。
STEP3. 答えを導く
以上より、(a) の誤りは 3番、(b) の正しい組み合わせは 2番( \( V_{o1} = 6.6\,\mathrm{V}, V_{o2} = -3.0\,\mathrm{V} \) )となります。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- オペアンプの理想特性では「差動増幅動作」「高入力インピーダンス」「直流増幅可能」「非常に高いゲイン」が重要です。
- 入力オフセットは理想的には「極めて小さい」ため、「大きい」とする記述は誤りとなります。
- 非反転増幅回路・反転増幅回路それぞれのゲイン公式を使って計算する問題は頻出です。抵抗比からゲインを求め、入力電圧を乗じるだけなので、まずは式を覚え、丁寧に代入・計算する習慣をつけましょう。