扇形導線(円弧導線)の磁界に関する問題
問題文(要約)
点 \( O \) を中心に、半径 \( 1\text{m} \) と \( 2\text{m} \) の円弧(いずれも \(\tfrac{1}{4}\) 円弧)と、それらを結ぶ直線導体から構成される扇形状の導体に直流電流 \( I=8\text{A} \) を流す。図示の向きに電流が流れているとき、点 \( O \) における磁界(\(\text{A/m}\))の大きさを求める問題です。
なお、導体は同一平面上にあり、巻数は 1 巻とする。また放射状(中心 \( O \) を通る)部分の導体は、点 \( O \) での磁界に寄与しないものと考えられます。
出題意図とポイント(重要度+B)
- 円弧導線がつくる磁界の基本公式(半径 \( r \) の円弧電流 \( I \) に対して、中心に生じる磁界の強さ \( H \) は \( \displaystyle H = \frac{I}{2r} \times \frac{\theta}{2\pi} \))
- 半径が異なる複数の円弧を同一平面内で組み合わせた場合の、中心点における磁界の 「差」や「和」 に注意
- 放射状に伸びる導線(中心を通る導線)の寄与はゼロになる(中心における磁界は発生しない)という事実の確認
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
- 円弧状導線による中心の磁界
半径 \( r \) の 全周 円導線(1巻き)に電流 \( I \) が流れると、中心における磁界の強さ(\( H \))は
\[
H_\text{full} = \frac{I}{2r}\,.
\]
これはAmpereの法則を用いた結果で、「\( \mu_0 I / (2r) \)」を\( \mu_0 \) で割った値です。
一方、角度 \( \theta \) のみを占める「部分円弧(\( \theta \) [rad])」の場合は、この 全周 に対する比率 \( \tfrac{\theta}{2\pi} \) をかければよいので、
\[
H_\text{arc} = \frac{I}{2r} \times \frac{\theta}{2\pi}\,.
\]
- 放射状導線(点 \( O \) を通る線)の寄与
放射方向の導線については、点 \( O \) において「導線がそのまま通過」するため、(対称性の観点から)ビオ・サバールの法則でも Ampereの法則でも磁界は生じないとみなせます。
STEP2. 数値を代入して計算
今回の扇形導線は、\( 1\text{m} \) の円弧と \( 2\text{m} \) の円弧がいずれも 1/4 円分(\( \theta=\tfrac{\pi}{2}\,\text{rad} \))で構成されており、それらを繋ぐ放射状導線が含まれます。
- 小円弧(半径 \( r=1\text{m} \)、角度 \( \theta=\pi/2 \))
\[
H_1 = \frac{I}{2 \times 1} \times \frac{\tfrac{\pi}{2}}{2\pi}
= \frac{I}{2} \times \frac{1}{4}
= \frac{I}{8}
= \frac{8}{8} = 1.0\ \text{A/m}.
\]
- 大円弧(半径 \( r=2\text{m} \)、角度 \( \theta=\pi/2 \))
\[
H_2 = \frac{I}{2 \times 2} \times \frac{\tfrac{\pi}{2}}{2\pi}
= \frac{I}{4} \times \frac{1}{4}
= \frac{I}{16}
= \frac{8}{16} = 0.5\ \text{A/m}.
\]
ここで、図を見ると小円弧と大円弧は 逆方向 に電流が回っている(=中心から見た磁界の向きが互いに逆を向く)状態になります。よって 片方が上向き、もう一方が下向き に作用するイメージです。すると中心 \( O \) での磁界は
\[
H_\text{net} = |H_1 – H_2|.
\]
実際には小円弧の磁界が大きく、かつ向きが逆なので、
\[
H_\text{net} = 1.0 – 0.5 = 0.5\ \text{A/m}.
\]
STEP3. 答えを導く
よって答えは \( 0.5\ \text{A/m}\) となり、選択肢の (2) が正解です。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- 円弧導線の中心磁界:全周で \( I/(2r) \)、部分円弧ならその角度比 \( \theta/(2\pi) \) を乗じる。
- 放射方向導線:中心 \( O \) を通る導線は点 \( O \) では磁界を生じない(ビオ・サバールの法則でもゼロ)。
- 半径の異なる円弧が同一平面上でつながっている場合、「磁界の方向が食い違う(一方が中心を ‘上向き’、もう一方が中心を ‘下向き’ に回り込む)ことが多い」ため、差 で求めるケースが典型。
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