理論過去問
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第三種電気主任技術者_平成22年度理論_問08

だなお

R, XL, XCの直列回路に関する問題

問題文(要約)

抵抗 \( R \)[Ω] と誘導性リアクタンス \( X_L \)[Ω] を直列に接続した回路の力率が \( \cos \varphi = \tfrac{1}{2} \) であった。そこに、容量性リアクタンス \( X_C \)[Ω] を直列接続したところ、今度は抵抗 \( R \)、誘導性リアクタンス \( X_L \)、容量性リアクタンス \( X_C \) を直列にした回路の力率が \( \tfrac{\sqrt{3}}{2} \)(遅れ) となった。求める \( X_C \) の値はどれか、という問題。

重要度:「必ず理解」

出題意図とポイント

  • 直列R-L回路の力率が与えられたとき、それをもとに \( X_L \) を求める典型的な問題です。
  • さらに、コンデンサ(容量性リアクタンス \( X_C \))を直列追加して新たな力率が与えられたときの回路全体の位相や力率を使って、\( X_C \) を求める流れを理解させる意図があります。
  • 試験に頻出の「力率」「ベクトル図」「インピーダンス計算」の基本を確認できる良問です。

正答番号:4


解法の手順

STEP1. 基本の公式等を確認

  1. 直列回路において力率 \( \cos \varphi \) は
    \[
    \cos \varphi = \frac{R}{\sqrt{R^2 + X^2}}
    \]
    ここで、\( X \) は回路全体のリアクタンス(誘導性なら \( X = X_L \)、容量を含めるなら \( X = X_L – X_C \))です。
  2. 本問題ではまず「抵抗 \( R \) と誘導性リアクタンス \( X_L \)」のみのときの力率が
    \[
    \cos \varphi = \frac{1}{2}
    \]
    という情報から、\( X_L \) と \( R \) の関係を導きます。
  3. 次に「抵抗 \( R \), 誘導性リアクタンス \( X_L \), 容量性リアクタンス \( X_C \)」直列のときの力率が
    \[
    \frac{\sqrt{3}}{2}
    \]
    で、しかも「遅れ(lagging)」ということから、\( X_L – X_C \) が正(+)である=誘導性が残っていることがわかります。

STEP2. 数値を代入して計算

  1. まずは \( X_L \) を求める: \[
    \cos \varphi = \frac{1}{2}
    \quad \Longrightarrow \quad
    \frac{R}{\sqrt{R^2 + X_L^2}} = \frac{1}{2}
    \]
    両辺を変形すると
    \[
    \sqrt{R^2 + X_L^2} = 2R
    \quad \Longrightarrow \quad
    R^2 + X_L^2 = 4R^2
    \quad \Longrightarrow \quad
    X_L^2 = 3R^2
    \quad \Longrightarrow \quad
    X_L = \sqrt{3}\,R
    \]
    (誘導性リアクタンスなので正の値を選びます)
  2. 次に \( X_C \) を求める: コンデンサ追加後の回路の力率が
    \[
    \cos \varphi’ = \frac{\sqrt{3}}{2}
    \]
    このときの回路のリアクタンスは
    \[
    X = X_L – X_C = \sqrt{3}\,R – X_C
    \]
    したがって
    \[
    \cos \varphi’
    = \frac{R}{\sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}}
    = \frac{\sqrt{3}}{2}
    \]
    よって
    \[
    \frac{R}{\sqrt{R^2 + (\sqrt{3}R – X_C)^2}}
    = \frac{\sqrt{3}}{2}
    \]
    両辺を2乗して整理すると
    \[
    \frac{R^2}{R^2 + (\sqrt{3}R – X_C)^2}
    = \frac{3}{4}.
    \]
    よって
    \[
    4R^2 = 3 \bigl[\,R^2 + (\sqrt{3}R – X_C)^2\bigr]
    \quad \Longrightarrow \quad
    4R^2 – 3R^2
    = 3(\sqrt{3}R – X_C)^2
    \quad \Longrightarrow \quad
    R^2 = 3(\sqrt{3}R – X_C)^2
    \]
    つまり
    \[
    (\sqrt{3}R – X_C)^2
    = \frac{R^2}{3}
    \]
    また問題文にある「遅れ側 (lagging)」であることから
    \[
    \sqrt{3}R – X_C > 0
    \quad \Longrightarrow \quad
    \sqrt{3}R – X_C
    = \frac{R}{\sqrt{3}}
    \]
    よって
    \[
    X_C
    = \sqrt{3}R
    – \frac{R}{\sqrt{3}}
    = R\left(\sqrt{3} – \frac{1}{\sqrt{3}}\right)
    = R\left(\frac{3 – 1}{\sqrt{3}}\right)
    = \frac{2R}{\sqrt{3}}
    \]

STEP3. 答えを導く

以上より、求める容量性リアクタンス \( X_C \) は
\[
X_C = \frac{2R}{\sqrt{3}}
\]
設問の選択肢 (4) が正解となります。


まとめ

今回の学習ポイントのまとめ

  1. 力率とインピーダンスの関係
    \(\cos \varphi = \frac{R}{|Z|}\) の式は非常に重要です。
  2. 直列回路の合成リアクタンス
    誘導性と容量性が同時にある場合は \( X_L – X_C \) で考える、という基本を押さえましょう。
  3. 力率改善の概念
    誘導性の遅れ角をコンデンサの進み角で打ち消し、力率を改善するという考え方も重要です。

以上のステップを確実に理解しておくと、同様の問題にも対応できるようになります。苦手意識をなくし、着実に得点源にしていきましょう!


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