【磁界と電界中の電子の運動に関する問題】
問題文(要約)
図1では、強さが一定で一様な磁界中に、速度 \( v \) [m/s] で電子を磁界の向きに対して角度 \( \theta \) で入射したところ、
- 電子は進行方向および磁界の向きにも常に(ア)方向の電磁力を受け、その軌跡は(イ)を描く。
図2では、強さが一定で一様な電界中に、速度 \( v \) [m/s\] で電子を電界の向きに対して角度 \( \theta \) で入射したとき、
- 電子は電界の向きと(ウ)方向の静電力を受け、その軌跡は(エ)を描く。
このとき、それぞれの空欄(ア), (イ), (ウ), (エ)に当てはまる言葉の組合せとして正しいものを選ぶ問題です。
重要度:必ず理解
本問は「電子が磁界・電界中でどのような力を受け、どのような軌跡を描くか」を問う典型的な問題です。電磁力と静電力のベクトル関係を正しく理解する良い機会でもあるため、必ず押さえておきたい重要ポイントです。
出題意図とポイント
- 磁界中の電子に作用する力は、速度ベクトルおよび磁界ベクトル両方に垂直(直角)であること。
- 電子の速度成分のうち、磁界に垂直な成分は円軌道を描き、磁界に平行な成分は等速直線運動する結果、「螺旋(らせん)運動」になること。
- 電界中では、電子は負電荷であるため電界方向と反対向きに力を受けること(クーロン力の向き)。
- 速度成分が電界に対して斜めに与えられるときには、鉛直(電界)方向へ等加速度運動・水平方向へ等速運動の合成で「放物線軌道」になること。
正答番号:5
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
- 磁界中の荷電粒子に働くローレンツ力
電子(電荷 \(-e\))が磁界 \(\vec{B}\) 中を速度 \(\vec{v}\) で運動するとき、受ける力 \(\vec{F}\) は
\[
\vec{F} = -e\, \vec{v} \times \vec{B}
\]
となり、これは常に \(\vec{v}\) と \(\vec{B}\) の両方に直角です。
- 電界中の荷電粒子に働く静電力
電子(電荷 \(-e\))が電界 \(\vec{E}\) 中に置かれた場合、受ける力 \(\vec{F}\) は
\[
\vec{F} = -e \,\vec{E}
\]
となり、電界の向きとは反対方向に作用します。
STEP2. 数値を代入して計算
ここでは数値計算というより「力の向き」と「運動形態」がポイントです。
- 磁界中での軌道
- 力の向き:磁界 \(\vec{B}\) および速度 \(\vec{v}\) に対して常に直角(垂直)。
- 軌跡:\(\theta\) の角度分、速度成分が磁界と平行な部分はまっすぐ進み、垂直な成分は円運動をするため「らせん状」になる。
- 電界中での軌道
- 力の向き:電界 \(\vec{E}\) の向きに対して反対(電子は負電荷)。
- 軌跡:水平(力が働かない)方向は等速運動、鉛直(電界)方向は一定加速度運動となるので「放物線軌道」になる。
STEP3. 答えを導く
最終的に (ア) は「直角(磁界と速度との関係)」、(イ) は「らせん(磁界中の電子軌道)」、(ウ) は「反対(電界に対して)」、(エ) は「放物線」。
選択肢を照合すると、番号 5 が該当します。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- 磁界中のローレンツ力は速度ベクトル・磁界ベクトルの両方に直角方向。
- 速度成分が磁界に平行な部分は変化せず、垂直な部分では等速円運動 → 合成すると「らせん」。
- 電界中の電子が受ける静電力は電界方向の反対(電子はマイナスだから)。
- 水平方向等速・鉛直方向等加速度 → 斜方投射の放物線運動と同様の形となる。
苦手意識を持たれることが多い「磁界・電界中の粒子の軌道」は、力のベクトル関係をしっかり押さえれば理解できます。ぜひ本質を押さえて問題演習を繰り返し、得点源にしていきましょう。