だなお
平行平板電極における電場分布と電圧計算の問題
問題文(要約)
平行平板電極(電極間距離10 mm)の中間に厚さ4 mm、比誘電率 \( \varepsilon_r = 4 \) の固体絶縁物が挟まれ、上下に空気層(いずれも比誘電率 \( \varepsilon_r = 1 \))がある構成です。上部電極(高電位)と下部電極(接地)間の電場分布、および下部電極側の空気層における電場強度が 2 kV/mm に達したときの電圧を求める問題です。
重要度:必ず理解
コンデンサのように層状に異なる誘電体が挟まれた場合、各層で電場や電位差がどう分担されるかを考える問題です。電気主任技術者試験では頻出のテーマなので、基本的な「電束連続の法則」や「電位差の分割」を必ず理解しましょう。
出題意図とポイント
- 出題意図
異なる比誘電率をもつ複数層にわたって電圧が加わるときの電場分布を理解させること。
下部電極側の空気部分で先に放電や絶縁破壊が起こりうる、という実際の高電圧現象の考え方にも関連します。
- ポイント
- 各層での電束密度 \( D = \varepsilon \cdot E \) が連続すること
- 空気層と誘電体層の電場強度の比は比誘電率に反比例すること
- 各層の厚さを考慮してトータルの電位差を求めること
正答番号:
(a) 5
(b) 2
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
- 電束密度の連続性
\( D = \varepsilon_0 \varepsilon_r E \) は層をまたいでも一定(電極面に自由電荷がない仮定)。
- 比誘電率に基づく電場強度の関係
空気 (\( \varepsilon_r = 1 \)) と固体絶縁物 (\( \varepsilon_r = 4 \)) の境界では
\[
\varepsilon_0 \cdot 1 \cdot E_{\text{air}}
= \varepsilon_0 \cdot 4 \cdot E_{\text{dielectric}}
\quad \Longrightarrow \quad
E_{\text{dielectric}} = \frac{E_{\text{air}}}{4}.
\]
- 電位差 \( V \) と電場の関係
それぞれの層で \( V_i = E_i \times \text{厚さ} \)(単位の整合に注意)
総電圧は各層の電位差の和として
\[
V = E_{\text{air}} \cdot 4 \;+\; E_{\text{dielectric}} \cdot 4 \;+\; E_{\text{air}} \cdot 2.
\]
STEP2. 数値を代入して計算
- (a) 電場分布の形
- 上部空気層(厚さ4 mm): \( E_{\text{air}} \)
- 固体絶縁物(厚さ4 mm): \( E_{\text{dielectric}} = \frac{E_{\text{air}}}{4} \)
- 下部空気層(厚さ2 mm): 上部空気層と同じ \( E_{\text{air}} \)
よって、空気層では同じ大きさの電場、誘電体内ではそれより1/4の電場強度。
図としては、上空気層→高いE、誘電体層→低いE、下空気層→また高いE、というステップ状分布です。
5つの選択肢のうち、この形は選択肢(5)が該当します。
- (b) 下部電極側の空気層で 2 kV/mm に達したときの電圧
下部空気層=上部空気層での電場と同じ \( E_{\text{air}} \) とすると、
\[
E_{\text{air}} = 2 \;(\text{kV/mm}), \quad
E_{\text{dielectric}} = \frac{2}{4} = 0.5 \;(\text{kV/mm}).
\]
総電圧 \( V \) は
\[
V = (E_{\text{air}} \times 4) + (E_{\text{dielectric}} \times 4) + (E_{\text{air}} \times 2).
\]
数値を代入すると、
\[
V = (2 \times 4) + (0.5 \times 4) + (2 \times 2)
= 8 + 2 + 4
= 14 \; (\text{kV}).
\]
よって選択肢(2)の14 kVが正解になります。
STEP3. 答えを導く
- (a) 電場分布の正しい形:選択肢(5)
- (b) 電圧:14 kV → 選択肢(2)
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- 層状に配置された誘電体それぞれの電場は、比誘電率によって分担が異なることを理解しましょう。
- 電束連続の法則により \( \varepsilon_r E \) が境界で等しくなることがポイントです。
- コンデンサ問題では「電場は厚さと誘電率で決まる」ことを意識して、各層の電位降下を合計して総電圧を求めます。
- 実際の高電圧設備や絶縁設計で、どの層で絶縁破壊が先に起こるかを見積もる際に大切な考え方です。
苦手意識を減らし、着実に得点源にしていきましょう!