第三種電気主任技術者_平成21年度理論_問18

トランジスタ増幅回路の h パラメータに関する問題
問題文(要約)
本問題は、エミッタ接地トランジスタ増幅回路の交流小信号解析を行う際に用いられる \(h\) パラメータ(\(h_{ie}, h_{re}, h_{fe}, h_{oe}\))を使って、入力側および出力側の関係を表す公式を確認し、さらに簡易回路を用いた場合との誤差を求める問題です。具体的には
- (a) 回路図(図1)をもとに入力電圧と出力電流の関係式を \(h\) パラメータで表す。
- (b) 実際の回路(図1)と簡易小信号等価回路(図2)で計算した結果の誤差 \(\Delta v_b\)(mV)と \(\Delta i_b\)(\(\mu\)A)を比較し、その最も近い組み合わせを選択する。
重要度:必ず理解
トランジスタの交流解析は、電気主任技術者試験でも頻出範囲です。特にエミッタ接地回路での \(h\) パラメータ活用法は基本的な内容なので、確実にマスターしておきましょう。
出題意図とポイント
- エミッタ接地回路の小信号解析における \(h\) パラメータの役割を理解しているか。
- \(h_{ie}\)(入力インピーダンス相当)・\(h_{re}\)(逆方向伝達)・\(h_{fe}\)(電流増幅率)・\(h_{oe}\)(出力アドミタンス)を正しく識別できるか。
- 簡易回路による計算値と、より正確な回路との比較・誤差評価を行えるか。
正答番号:a:5, b:4
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
トランジスタの小信号モデルである \(h\) パラメータモデルは、次の関係式で表されます。
\[
\begin{cases}
v_b = h_{ie} i_b + h_{re} v_c \\[6pt]
i_c = h_{fe} i_b + h_{oe} v_c
\end{cases}
\]
ここで
- \(v_b\):ベース端子の小信号電圧
- \(i_b\):ベース端子の小信号電流
- \(v_c\):コレクタ端子の小信号電圧
- \(i_c\):コレクタ端子の小信号電流
また、各 \(h\) パラメータの物理的な意味は以下のとおりです。
- \(h_{ie}\):入力インピーダンス成分(\( \Omega \))
- \(h_{re}\):逆方向電圧伝達比(無次元)
- \(h_{fe}\):前方向電流増幅率(無次元)
- \(h_{oe}\):出力アドミタンス成分(\(S\); ジーメンス)
問題文(a)では、これらのパラメータを「入力カインピーダンス(\(h_{ie}\))」や「出力アドミタンス(\(h_{oe}\))」といった形でどう対応づけるかを問われています。結果として、(a) の選択肢は「5」番が正解となります。
STEP2. 数値を代入して計算
次に(b)では、図1の実回路と図2の簡易小信号回路を使って、同じトランジスタの動作点周りの小信号解析を行います。たとえば、ベース電圧 \(v_b\) やベース電流 \(i_b\) をそれぞれ計算し、
\[
\Delta v_b = v_{b1} – v_{b2} \quad (\text{mV単位})
\]
\[
\Delta i_b = i_{b1} – i_{b2} \quad (\mu\text{A単位})
\]
と差分を求めます。問題文にある選択肢(1)~(5)の中で、最も近い値が (4) \( ( \Delta v_b = 0.57\,\mathrm{mV},\;\Delta i_b = 0.39\,\mu\mathrm{A} ) \) となり、(b) の答えは「4」となります。
STEP3. 答えを導く
- (a) の正解:5
- (b) の正解:4
以上が、本問題の最終的な解答となります。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- エミッタ接地回路の交流解析では、\(h\) パラメータがよく用いられます。特に
- \(h_{ie}\):入力インピーダンス
- \(h_{fe}\):電流増幅率
- \(h_{re}\):逆方向電圧伝達比
- \(h_{oe}\):出力アドミタンス
といった物理的意味を押さえましょう。 - 簡易小信号回路は設計や試験問題で頻繁に利用しますが、厳密回路と誤差がどの程度生じるかを比較できるようにしておくことが大切です。
苦手意識を持たず、一つひとつのパラメータの意味と計算手順をしっかり理解しておけば、点数源にしやすい分野です。繰り返し問題演習を行い、出題パターンに慣れていきましょう。