理論過去問
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第三種電気主任技術者_平成21年度理論_問10

だなお

インダクタンスと抵抗の直列回路における過渡応答を考察する問題

問題文(要約)

図のようにインダクタンス \( L \) [H] と抵抗 \( R \) [\(\Omega\)] が直列になった回路に、図2のような振幅 \( E \) [V]、パルス幅 \( T_0 \) [s] の方形波電圧 \( v_i \) [V] を入力します。
このとき、抵抗 \( R \) の両端電圧 \( v_R \) の波形はどれに相当するかを問う問題です。
ただし、回路の時定数 \(\frac{L}{R}\) が \( T_0 \) より十分に小さい (\(\frac{L}{R} \ll T_0\)) とします。

重要度:必ず理解

LR回路の基本的な過渡現象(立ち上がり・立ち下がり)に関する典型的な出題です。出題頻度も高く、必ず理解しておきたい重要ポイントです。

出題意図とポイント

  • インダクタンス \( L \) を含む回路における過渡現象の把握
  • 時定数 \(\frac{L}{R}\) が「入力パルス幅 \( T_0 \)」に比べて小さい場合の電圧・電流の近似挙動
  • 方形波が加わるときの抵抗両端電圧の時間変化を正しくイメージできるかどうかの確認

時定数 \(\frac{L}{R}\) が非常に小さいため、電流はすぐに定常値まで立ち上がり、パルスが切れると急速に電流が減少していきます。これを踏まえると、抵抗両端電圧 \( v_R \) は短時間で \( E \) に到達し、パルス終了後すぐに 0 [V] に向かって減衰する形となります。

正答番号:5


解法の手順

STEP1. 基本の公式等を確認

  • LR直列回路の過渡応答では、入力電圧 \( v_i \) が加わった瞬間から電流 \( i \) は徐々に増加し、定常的には \( i = \frac{E}{R} \) へ近づきます。
  • 回路方程式は
    \[
    v_i(t) = L \frac{di}{dt} + R \, i(t)
    \]
    となります。
  • 時定数は \(\tau = \frac{L}{R}\) です。ここで問題文にあるように \(\tau \ll T_0\) であれば、パルス幅の間にほぼ定常電流になると考えられます。

STEP2. 数値を代入して計算

厳密に計算すると、立ち上がり時の電流は
\[
i(t) = \frac{E}{R} \Bigl( 1 – e^{-\frac{R}{L}t} \Bigr)
\]
です。
しかし \(\frac{L}{R} \ll T_0\) なので、入力パルスが始まってからすぐに \( i \approx \frac{E}{R} \) に達します。よって抵抗電圧 \( v_R = R \cdot i \approx E \) となります。
パルス終了時刻 \( t = T_0 \) で入力電圧が 0 [V] になると、流れている電流は \(\frac{E}{R}\) 付近ですが、そこから急速に指数関数的に減少していきます。
結果として、抵抗両端電圧 \( v_R \) は入力パルスの立ち上がりからほぼ \( E \) となり、パルスが切れた瞬間から指数関数的に 0 [V] に減少する波形となります。

STEP3. 答えを導く

選択肢(5)の波形が、まさに「0 から一気に \( E \) まで立ち上がって、一定値を保持し、パルス終了後に急激に減衰して 0 へ向かう」形となっています。
したがって正答は(5)となります。


まとめ

今回の学習ポイントのまとめ

  • 時定数 \(\frac{L}{R}\) がパルス幅 \( T_0 \) より十分小さい場合、抵抗電圧はほぼ入力電圧と同じ大きさで立ち上がり、パルス終了後は急速に 0 [V] に戻る。
  • LR回路の過渡特性を押さえることで、問題文が求める「どんな波形になるか」をイメージしやすくなる。
  • 試験では、時定数の大小関係に着目して近似的に挙動をつかむ問題が多いので、今回のような考え方は頻出の理解ポイント。

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