だなお
交流回路の力率と並列接続に関する問題
問題文(要約)
交流電源(電圧 140 V、位相角 0°)に対して、力率 0.6 の誘導性負荷を単独で接続したところ、電源電流が 37.5 A であった。次にスイッチを閉じて抵抗 \( R \)(\(\Omega\))を誘導性負荷と並列に接続したところ、電源電流が 50 A に増加した。このときの抵抗 \( R \) の値を (1)~(5) の中から求める問題。
重要度:必ず理解
この問題は、単相交流回路の複素数(ベクトル)を扱う典型的な計算問題です。力率をもとに誘導性負荷の実効電流・無効電流を求め、さらに並列接続での電流ベクトル合成を行い、抵抗値を導く問題となります。計算手順やベクトル合成の考え方をしっかり把握することが大切です。
出題意図とポイント
- 誘導性負荷(力率 0.6)の電流の実部(有効電流)と虚部(無効電流)を分解し、複素数として扱う。
- 並列に抵抗 \( R \) を接続すると、抵抗電流は電源電圧と同相(位相角 0°)になるため、ベクトル合成で電流の大きさを 50 A とする条件から \( R \) を求める。
- ベクトル合成の式や力率からの三角比(\(\sin \phi\)、\(\cos \phi\))を丁寧に使うのがポイント。
正答番号:3
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
- 力率 \( \cos \phi = 0.6 \) であれば、位相角 \( \phi = \arccos(0.6) \) となり、\(\sin \phi = 0.8\) となります(誘導性負荷なので電流は遅れ)。
- 誘導性負荷が流す電流をベクトルで表すと、電源電圧を基準(位相 0°)としたとき
\[
I_L = 37.5 \angle -\phi
\]
となります。
- 実軸(有効成分)・虚軸(無効成分)で表すと、誘導性負荷の電流成分は
\[
I_{L,\text{real}} = 37.5 \times \cos \phi = 37.5 \times 0.6 = 22.5 \ (\text{A})
\]
\[
I_{L,\text{imag}} = -\,37.5 \times \sin \phi = -\,37.5 \times 0.8 = -\,30 \ (\text{A})
\]
(マイナスは電流が遅れ、つまり虚軸の下方向を表す)
- 抵抗 \( R \) を並列に接続すると、抵抗には電圧と同相の電流 \( I_R \) が流れる。大きさは
\[
I_R = \frac{V}{R} = \frac{140}{R}
\]
(位相角 0°)
STEP2. 数値を代入して計算
- 全体の電源電流 \( I_T \) はベクトル合成で
\[
I_T = I_L + I_R \ (\text{ベクトル和})
\]
です。実軸成分は \( 22.5 + \frac{140}{R} \)、虚軸成分は \(-30\) となります。
- 問題文より、合成電流 \( I_T \) の大きさは 50 A と与えられていますから、
\[
\sqrt{\Bigl(22.5 + \frac{140}{R}\Bigr)^2 + (-30)^2} = 50
\]
となります。
- 具体的に式を展開すると、
\[
\Bigl(22.5 + \frac{140}{R}\Bigr)^2 + 900 = 2500
\]
\[
\Bigl(22.5 + \frac{140}{R}\Bigr)^2 = 1600
\]
\[
22.5 + \frac{140}{R} = 40 \quad (\text{正のルートを採用})
\]
\[
\frac{140}{R} = 17.5
\]
\[
R = \frac{140}{17.5} = 8.0 \ (\Omega)
\]
STEP3. 答えを導く
よって求める抵抗値 \( R \) は 8.0 \(\Omega\) となり、選択肢の (3) が正解です。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- 力率から位相角を求め、電流を実軸・虚軸成分に分解することの重要性を再確認しましょう。
- 並列回路において、抵抗電流は電圧と同相、誘導負荷電流は遅れ相といった位相の違いをベクトル合成で扱うことがポイントです。
- 計算の途中で三角関数の値や平方根を用いますが、試験対策としては電験三種の典型問題なので慣れておくと安心です。