理論過去問
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第三種電気主任技術者_平成23年度理論_問13

だなお

トランジスタを用いた非安定(無安定)マルチバイブレータの問題

問題文(要約)

この問題では、トランジスタとコンデンサを用いた非安定マルチバイブレータ回路の一部について、スイッチ \( S \) を開閉したときのベース電圧やコンデンサの充放電動作を確認し、回路動作をもとに空欄を埋める問題です。選択肢 \((1)\)~\((5)\) のいずれかを選ぶ形式になっています。

重要度:必ず理解

非安定マルチバイブレータは、トランジスタ・コンデンサ・抵抗を組み合わせて繰り返し ON/OFF を繰り返す発振回路の一種であり、電子回路の基本原理を学ぶうえで重要です。電源投入時やスイッチ開閉時のベース電圧・コンデンサ電圧の変化がポイントになります。

出題意図とポイント

  • スイッチ \( S \) を開閉することで、トランジスタのベース電圧がどのように変化するかを理解する。
  • コンデンサ \( C \) が充電しているのか放電しているのかを、電流の向きとベース電圧の極性(正または負)から判断する。
  • 「トランジスタの ON/OFF に伴うコレクタ電圧の高低変化」「コンデンサの充放電経路」「ベース電圧の変化の流れ(負→零→正 など)」を把握しておくことが重要。

正答番号:5


解法の手順

STEP1. 基本の公式等を確認

  1. トランジスタのベース電圧と ON/OFF
  • ベース電圧がエミッタ電圧よりある程度高い(約 \(0.7\,\mathrm{V}\))場合、トランジスタは ON(飽和領域)に入り、コレクタ電圧は低くなる(ほぼ飽和電圧)。
  • ベース電圧がエミッタ電圧より低く、ベース電流がほぼ流れない場合、トランジスタは OFF となり、コレクタ電圧は \(V_{\mathrm{CC}}\) 近くまで上昇する。
  1. コンデンサの充放電と電流方向
  • コンデンサが「充電」されるときは、低電位側から高電位側へ向かう流れと見なすか、高電位からコンデンサへ流れ込むかで電流方向を決める(問題文内の矢印表記に注意)。
  • 「放電」では、コンデンサに蓄えられた電荷が外部回路に出ていく(電流の向きは充電時と逆)。
  1. 問題文の状況整理
  • \( S \) がオフのとき(スイッチ開路)、トランジスタは OFF(ベースが正しくバイアスされていない)状態と考えられるケースが多い。
  • コンデンサがどの向きに充電されるか、次いで \( S \) をオンにしたときにコンデンサ電荷がどのように放電するかを追う。

STEP2. 数値を代入して計算

本問題は数値計算というより、極性や動作状態を判断する理論問題です。

  • (ア) が「負」、(イ) が「オフ」、(ウ) が「右」、(エ) が「放電」、(オ) が「零から正」になる組合せが正しい動作を説明します。

具体的には、

  1. \( S \) を開にした初期状態で、トランジスタのベースはマイナス側(あるいはエミッタと比べて低い電圧)となり、トランジスタは OFF((イ) = オフ)。
  2. このときコンデンサは回路の右側(高い電位)から左側(低い電位)へ電流が流れ込む形で充電しはじめます(問題文には「矢印『右』の向きに流れ」とある)。
  3. つぎに \( S \) をオンにすると、充電されていたコンデンサからベース側へ向けて急激に電流が流れるため、ベース電圧は一時的に負となります。それによってコンデンサは放電((エ) = 放電)を開始し、やがてベース電圧は 0 V 付近から徐々に正方向((オ) = 零から正)へ移り、トランジスタが ON に転じるとコレクタ電圧が低下します。

STEP3. 答えを導く

上記の動作シーケンスから判断すると、設問の選択肢 \((1)\)~\((5)\) のなかで「(ア) = 負, (イ) = オフ, (ウ) = 右, (エ) = 放電, (オ) = 零から正」の組合せがもっとも矛盾なく回路動作を説明できます。よって、正答は (5) となります。


まとめ

今回の学習ポイントのまとめ

  • 非安定(無安定)マルチバイブレータ回路では、コンデンサが交互に充放電を繰り返し、トランジスタが ON/OFF を交互に行うことで発振動作を行う。
  • トランジスタが OFF になる要因は、ベース電圧が十分に高くない(場合によっては負電位になる)ため。
  • 充電か放電かを区別するには、コンデンサ両端の電位差と電流の向きに着目する。
  • 問題文で書かれている「スイッチの ON/OFF」と「矢印の向き」を正確に読み取り、それがベースやコレクタ電圧の変化とどのように対応しているかを把握することが大切。
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