静電界に関する問題
問題文(要約)
2つの小さな帯電体や点電荷、等電位面、コンデンサなど、静電界に関わる5つの記述が提示されています。その中から正しいものを1つ選ぶ問題です。
- 2つの帯電体の間に働く力が、電気量の“和”に比例し、距離の2乗に反比例する
- 点電荷による電界が、点電荷の電気量に比例し、距離に反比例する
- 電気力線上の任意の点の接線方向が、その点の電界の方向に一致する
- 等電位面上の正電荷には、その面に沿った方向に正のクーロン力が働く
- コンデンサ電極板間に誘電体を入れると、静電容量と電極板間の電界が誘電率に比例して増大する
出題意図とポイント 重要度「A:頻出(必ず理解)」
- 静電界(クーロン力や電界の性質)に関する基礎理解を確認する問題
- 静電界は「電場」「電位」「電気力線」など、電気主任技術者試験で頻出のトピックです。
- 重要度:A(必ず理解)
解法の手順
ここでは、各選択肢が正しいかどうかを、基本的な静電気学の法則に基づいて検証します。
STEP1. 基本の公式等を確認
- クーロンの法則
2つの点電荷 ( Q_1 ) と ( Q_2 ) が真空中で距離 ( r ) を隔てて存在するとき、相互作用する静電気力 ( F ) は
\( F = k \times \frac{ Q_1 Q_2 }{ r^2 } \)
となり、「電気量の積に比例」し、距離の2乗に反比例します。
- 点電荷が作る電界
点電荷 ( Q ) が作る電界 ( E ) は、
\( E = k \times \frac{ Q }{ r^2 } \)
で表され、「点電荷の電気量に比例」「距離の2乗に反比例」となります。
- 電気力線の方向
電気力線は、任意の点での接線方向がその点の電界ベクトル方向に一致します。
- 等電位面
等電位面上では電位が一定であり、その面に沿って移動しても電位差はありません。よって、等電位面上を接線方向に進む場合、電位差が生じないため、そこにクーロン力は基本的に働きません。電界は等電位面に対して常に垂直方向を向きます。
- コンデンサへの誘電体挿入
- コンデンサの静電容量 ( C ) は、誘電体の誘電率 ( \varepsilon )(または比誘電率 \( \varepsilon_r \))を入れることで増加します。
- 一方、コンデンサ間の電界が「誘電率に比例して増大」する、という表現は誤りです。一般に同じ電圧をかける条件なら、電界強度は電極間電圧と板間距離の比で決まるため、誘電率の増加によって電界自体が大きくなるわけではありません。
STEP2. 数値を代入して計算
この問題は計算問題というよりも、各法則を正しく理解しているかを確認する問題です。
- (1) は「電気量の和に比例」とある時点で、クーロンの法則に反します(積に比例するのが正)。
- (2) は「距離に反比例」と書いてありますが、正しくは「距離の2乗に反比例」です。
- (3) は「電気力線の接線方向は電界の方向に一致する」という内容で、静電界の定義上、これが正しいです。
- (4) は「等電位面に沿った方向にクーロン力」が働くという記述で、これは誤りです。等電位面に沿った方向(接線方向)には電位差がないため、力は働きません。
- (5) は「コンデンサの電極板間の電界が誘電率に比例して増大」という部分が誤りです。静電容量は増大しますが、電界の増大を保証するわけではありません。
STEP3. 答えを導く
したがって、正しい選択肢は「(3) 電気力線上の任意の点での接線の方向は、その点の電界の方向に一致する」です。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- クーロンの法則:力は「電荷の積」に比例、「距離の2乗」に反比例する。
- 点電荷の電界:電界強度は「電荷に比例」「距離の2乗に反比例」。
- 電気力線:電界の方向を示すため、接線は電界ベクトルと同一方向をとる。
- 等電位面:電界は常に垂直方向、面に沿った接線方向に力は働かない。
- 誘電体:コンデンサの静電容量を増やすが、電界そのものを単純に“増大”させるわけではない。
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