コイルの磁束鎖交数と磁気エネルギーに関する問題
問題文(要約)
直流電流が流れるコイルのインダクタンスが \( 1 \text{mH} \) のとき、電流 \( 10 \text{A} \) の場合と \( 30 \text{A} \) の場合で、
- コイルの磁束鎖交数 \( \Phi \)
- コイルに蓄えられる磁気エネルギー \( W \)
の変化量を問う問題です。
具体的には、以下のような空欄 \( (ア), (イ), (ウ) \) が設定され、正しい組み合わせを選ぶ形式となっています。
出題意図とポイント(重要度B)
- インダクタンス \( L \) を用いた磁束鎖交数 \( \Phi = L I \) の計算
- 磁気エネルギー \( W = \tfrac{1}{2} L I^2 \) の計算
- 電流値が変化したときの \( \Phi \) と \( W \) の増加比の確認
これらは「電気理論」の重要な基本公式です。第3種電気主任技術者試験ではほぼ毎年類題が登場する頻出範囲なので、確実に習得しておきましょう。
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
- 磁束鎖交数(リンクトフラックス)\( \Phi \) はコイルのインダクタンス \( L \) と流れる電流 \( I \) の積で表されます。
\[
\Phi = L \, I
\]
- コイルに蓄えられる磁気エネルギー \( W \) は
\[
W = \tfrac{1}{2} L \, I^2
\]
で与えられます。
STEP2. 数値を代入して計算
(1) 初期状態 ( \( I=10\text{A} \) )
- 与えられたインダクタンス \( L = 1\text{mH} = 1\times 10^{-3}\text{H} \)
- 磁束鎖交数 \( \Phi_1 \)
\(
\Phi_1 = L \times I = 1\times 10^{-3} \times 10 = 1\times 10^{-2}\,\text{Wb}
\)
- 磁気エネルギー \( W_1 \)
\(
W_1 = \tfrac{1}{2} \times 1\times 10^{-3} \times 10^2
= \tfrac{1}{2} \times 1\times 10^{-3} \times 100
= \tfrac{1}{2} \times 0.1 = 0.05\,\text{J}
= 5\times 10^{-2}\,\text{J}
\)
(2) 電流を 30[A] に変化させた場合 ( \( I=30\text{A} \) )
- 磁束鎖交数 \( \Phi_2 \)
\(
\Phi_2 = L \times I = 1\times 10^{-3} \times 30 = 3\times 10^{-2}\,\text{Wb}
\)
\( \Phi_2 \) は \( \Phi_1 \) の3倍となります。
- 磁気エネルギー \( W_2 \)
\(
W_2 = \tfrac{1}{2} \times 1\times 10^{-3} \times 30^2
= \tfrac{1}{2} \times 1\times 10^{-3} \times 900
= \tfrac{1}{2} \times 0.9 = 0.45\,\text{J}
= 4.5\times 10^{-1}\,\text{J}
\)
\( W_2 \) は \( W_1 \) の9倍となります。
STEP3. 答えを導く
- \( (ア) = \Phi_1 = 1 \times 10^{-2}\,\text{Wb} \)
- \( (イ) = W_1 = 5 \times 10^{-2}\,\text{J} \)
- \( \Phi_2 \) は \( \Phi_1 \) の3倍、\( W_2 \) は \( W_1 \) の9倍
よって選択肢の中で、\( (ア) \) が \( 1 \times 10^{-2} \)、\( (イ) \) が \( 5 \times 10^{-2} \) で、\( (ウ) \)が \( \Phi_2 \) が \( \Phi_1 \) の3倍、\( W_2 \) が \( W_1 \) の9倍に対応する (2) が正解となります。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- 磁束鎖交数 \( \Phi = LI \):電流が3倍になると磁束鎖交数も3倍になる。
- 磁気エネルギー \( W = \tfrac{1}{2}LI^2 \):電流が3倍になるとエネルギーは \( 3^2=9 \) 倍になる。
- 第3種電気主任技術者試験の「電気理論分野」では、インダクタンス、コイルの特性、エネルギー計算が頻出。
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