理論過去問
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第三種電気主任技術者_平成23年度理論_問15

だなお

三相交流回路におけるインダクタンスとコンデンサ容量の関係を求める問題

問題文(要約)

三相交流源(線間電圧 \( V \))から、それぞれの相にインダクタンス \( L \)(単位:H)のコイルを直列に入れたうえで、デルタ接続の抵抗 \( R \)(Ω)とコンデンサ \( C \)(F)の並列回路を接続した問題です。三相負荷全体の力率が 1 となるときの

  1. インダクタンス \( L \) とコンデンサ \( C \) の関係式
  2. コンデンサ端子電圧の大きさ

を問う内容です。

重要度:必ず理解

力率が 1(遅れ無・進み無)になる条件は、理論上非常に基本的かつ重要なトピックです。三相交流回路問題では、受験生がつまずきやすい「複素インピーダンス」「力率調整」などを扱っているため、ぜひ押さえておきましょう。

出題意図とポイント

  • 出題意図
    三相交流回路の力率が 1 になる条件(すなわち、供給側から見て見かけのリアクタンスがゼロ)を理解しているかを確認する問題です。
    また、デルタ接続の R と C の並列回路に、直列の L がついたときの全体インピーダンスの実部・虚部の扱いがポイントになります。
  • ポイント
  • インダクタのリアクタンス(\( \omega L \))とコンデンサのリアクタンス(\( 1 / (\omega C) \))のバランスを正しく押さえる。
  • デルタ接続の並列回路が三相平衡負荷としてどのように見えるかを検討する。
  • 力率 1 ⇒ 全体の無効電力が 0 ⇒ 供給側で見た虚数成分をキャンセルする関係式を導く。
  • コンデンサ端子電圧が、供給線間電圧 \( V \) に対してどの程度大きく(または小さく)なるかを計算で確認する。

正答番号

  • (a) インダクタンス \( L \) の式: 2
  • (b) コンデンサ端子電圧の式: 2

解法の手順

本問題を解くうえで、一相分に注目して「直列インダクタ + デルタ1枝(R||C)」のインピーダンスを考え、三相平衡負荷なので総合力率を 1(虚部 = 0)にする条件を導きます。

STEP1. 基本の公式等を確認

  1. インダクタのリアクタンス
    \[
    X_L = \omega L
    \quad (\omega = 2\pi f)
    \]
  2. コンデンサのリアクタンス
    \[
    X_C = \frac{1}{\omega C}
    \]
  3. 並列回路 (R と C) の複素インピーダンス
    デルタ各枝のインピーダンスを \( Z_{\Delta} \) とすると、
    \[
    \frac{1}{Z_{\Delta}}
    = \frac{1}{R} + j \omega C
    \quad \Longrightarrow \quad
    Z_{\Delta}
    = \frac{1}{\frac{1}{R} + j \omega C}.
    \]
    これを実部・虚部に分解すると、問題文の選択肢のように分母に \(\bigl( 1 + (\omega CR)^2 \bigr)\) という形が現れます。
  4. 力率 1 の条件
    供給側から見た総インピーダンスの虚数部分が 0(つまり、合成無効電力が 0)になります。

STEP2. 数値を代入して計算

  • 力率 1 ⇒ 直列の \( X_L \) とデルタ負荷側(C で生じる進み成分)の合成が打ち消し合う。
  • 三相デルタのバランス負荷では、各枝の並列回路の虚部を合計したものと、直列インダクタが持つ虚部とのつり合いを考慮します。
  • 結果として、(a) のインダクタンス \( L \) は次式で与えられるのが正しい解になります。

\[
L
= \frac{3 \, C \, R^2}{1 + 9 (\omega C R)^2}.
\]

(問題文の選択肢で 2番 がこれに該当します)

  • (b) コンデンサ端子電圧 \( V_C \) を求めると、力率 1 条件下では下式(選択肢 2番)が成り立ちます。

\[
V_C
= V \sqrt{\,1 + 9 (\omega C R)^2}.
\]

STEP3. 答えを導く

  • (a) インダクタンスの式 → 選択肢 2
    \[
    L
    = \frac{3 \, C \, R^2}{1 + 9 (\omega C R)^2}
    \]
  • (b) コンデンサ端子電圧 → 選択肢 2
    \[
    V_C
    = V \sqrt{1 + 9 (\omega C R)^2}.
    \]

まとめ

今回の学習ポイントのまとめ

  • 三相負荷の力率が 1 になる条件
    直列リアクタンス(インダクタ)と並列コンデンサが見掛け上ちょうど釣り合って、供給側からみた無効電流が 0 となること。
  • デルタ接続 R||C の解析
    並列回路は複素アドミタンスで考え、実部・虚部のバランスを求めるのが鍵。
  • コンデンサ端子電圧が線間電圧を上回る場合
    力率改善などの回路では、コンデンサ両端に線間電圧より大きな電圧がかかることがあり、注意が必要。
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