抵抗・コイル・コンデンサが接続された単相3線式交流回路の線電流に関する問題
問題文(要約)
抵抗・コイル・コンデンサによる負荷を、単相3線式交流電源(線間電圧 \( V_{ab} = 100\,\mathrm{V}, \; V_{bc} = 100\,\mathrm{V}, \; V_{ac} = 200\,\mathrm{V} \))に接続したとき、各端子 \(a, b, c\) を流れる線電流 \( I_a, I_b, I_c \) の大小関係を問う問題です。選択肢は以下の5つとなっています。
- \( I_a = I_c > I_b \)
- \( I_a > I_c > I_b \)
- \( I_b > I_c > I_a \)
- \( I_b > I_a > I_c \)
- \( I_c > I_a > I_b \)
重要度:必ず理解
単相3線式における線電流のベクトル合成や、インピーダンスの大きさ・位相の影響を理解しているかを確認する必須の内容です。第3種電気主任技術者試験の電力分野(交流理論)で頻出するテーマです。
出題意図とポイント
- 各線間電圧に対して負荷がどのようなインピーダンス(抵抗・インダクタンス・キャパシタンス)で接続されるかによって電流が決まります。
- 問題では、負荷が「抵抗+コイル(インダクタンス)」「抵抗+コイル」「コイル+コンデンサ」のように組み合わさっています。
- 特に \( V_{ac} = 200\,\mathrm{V} \) が他より高電圧である点と、コイルとコンデンサの組合せ負荷(実質的なリアクタンスの小さい負荷)ほど電流が大きくなる点が重要です。
- 結果的に、線電流のうち \( I_a \) が最大、続いて \( I_c \)、そして \( I_b \) が最小という関係になります。
正答番号:2
\[
I_a > I_c > I_b
\]
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
- 線間電圧の確認
問題で与えられている線間電圧は
\[
V_{ab} = 100\,\mathrm{V}, \quad
V_{bc} = 100\,\mathrm{V}, \quad
V_{ac} = 200\,\mathrm{V}.
\]
- 負荷のインピーダンス
- \( a\text{-}b \) 間:抵抗 \( R = 3\,\Omega \) とコイル \( X_L = 4\,\Omega \) の直列
\[
Z_{ab} = 3 + j4 \quad \Longrightarrow\quad |Z_{ab}| = \sqrt{3^2 + 4^2} = 5\,\Omega.
\]
- \( b\text{-}c \) 間:同様に \( R = 3\,\Omega \) と \( X_L = 4\,\Omega \) の直列
\[
Z_{bc} = 3 + j4 \quad \Longrightarrow\quad |Z_{bc}| = 5\,\Omega.
\]
- \( a\text{-}c \) 間:コイル(インダクタンス \( X_L = 8\,\Omega \))とコンデンサ(容量リアクタンス \( X_C = 6\,\Omega \))の直列
\[
Z_{ac} = j8 + \bigl(-j6\bigr) = j2 \quad \Longrightarrow\quad |Z_{ac}| = 2\,\Omega.
\]
(抵抗要素は考慮されず、実数部が 0 の純リアクタンスとみなします)
- 各負荷電流の大きさ
- \( I_{ab} = \dfrac{V_{ab}}{|Z_{ab}|} = \dfrac{100}{5} = 20\,\mathrm{A}. \)
- \( I_{bc} = \dfrac{V_{bc}}{|Z_{bc}|} = \dfrac{100}{5} = 20\,\mathrm{A}. \)
- \( I_{ac} = \dfrac{V_{ac}}{|Z_{ac}|} = \dfrac{200}{2} = 100\,\mathrm{A}. \)
STEP2. 数値を代入して計算
- 位相のイメージ
- \( Z_{ab}, Z_{bc} \) は \( \tan^{-1}(4/3)\approx 53^\circ \) 程度の遅れ位相をもたらす(インダクティブ負荷)。
- \( Z_{ac} = j2 \) は純インダクティブ成分なので、電流は電圧より \( 90^\circ \) 遅れる。
- 線電流のベクトル合成
- \( I_a \) は \( a \) 端子からの出力電流で、実質的に \( I_{ab} \)(\( a \to b \)方向)と \( I_{ac} \)(\( a \to c \)方向)のベクトル和。
- \( I_b \) は \( I_{ba} \)(\( b \to a \)に流れる成分)と \( I_{bc} \)(\( b \to c \))のベクトル和。
- \( I_c \) は \( I_{ca} \)(\( c \to a \)方向)と \( I_{cb} \)(\( c \to b \)方向)のベクトル和。 実際に近似計算すると
\[
I_{ab}\approx 20\angle -53^\circ, \quad
I_{ac}\approx 100\angle -90^\circ
\]
などとなり、それらを合成すれば
\[
|\,I_a\,|\approx 116\,\mathrm{A}, \quad
|\,I_b\,|\approx 0\,\mathrm{A} \quad (\text{位相関係で打ち消し合うイメージ}), \quad
|\,I_c\,|\approx 116\,\mathrm{A}.
\]
よって、大きさ関係は
\[
I_a \approx I_c \gg I_b.
\]
実際はわずかな差で
\[
I_a > I_c > I_b
\]
となります(選択肢(2)が該当)。
STEP3. 答えを導く
以上より、正しい大小関係は
\[
I_a > I_c > I_b
\]
です。問題の解答番号は(2)となります。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- 単相3線式回路での線電圧・負荷電流の把握
3線式でも、線間電圧それぞれに対応した負荷のインピーダンスに応じて電流が決まり、線電流はそれらのベクトル和で求まる。
- リアクタンスの大小が電流を大きく左右する
純インダクタ+コンデンサによる負荷は、有効抵抗が小さい(またはない)ため電流が非常に大きくなりやすい。
- ベクトル合成による電流の打ち消し
同程度の負荷でも位相が異なると、ある線の電流が小さく(場合によってはほぼ打ち消し合う)ことが起こる。
こうした原理・計算手順をしっかり理解しておくと、第3種電気主任技術者試験の電力科目で類題が出題された際に対処しやすくなります。苦手意識を減らし、着実に得点源にしていきましょう。