マルチレンジ直流電流計の内部抵抗とシャント抵抗に関する問題
問題文(要約)
直流電流計 \( M \)(内部抵抗 \( r = 10\,\mathrm{m\Omega} \))を、最大 \(1\,\mathrm{A}\) と \(3\,\mathrm{A}\) の2レンジで使用するため、それぞれのレンジに対応したシャント抵抗 \( R_1 \) および \( R_2 \) が用いられる。問題文では、シャント抵抗値の比や電流計全体の内部抵抗などを求める式に複数の選択肢が提示されており、その中から正しい組合せを選ぶ。
重要度:必ず理解
本問題は「電気計測」分野で頻出となる直流電流計の多レンジ化に関する典型的な出題です。シャント抵抗の考え方や、メータ内部抵抗との組合せによる電流分担の仕組みをしっかり理解しておく必要があります。
出題意図とポイント
- 電流計を異なるレンジ(1Aレンジ、3Aレンジなど)で使用するときのシャント抵抗の役割を理解しているか。
- 「測定レンジ倍増=メータ本体と並列に流れる電流の比率が変化する」という考え方を、具体的に式で表せるか。
- 各レンジでの総合的な内部抵抗を導く計算ができるか。
以上の論点を確認する問題といえます。
正答番号:5
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
まず、多レンジ電流計では下記のような考え方を押さえておきましょう。
- メータ本体(内部抵抗 \( r \))には最大定格電流 \( 0.5\,\mathrm{A} \) まで流せるとする。
- 1Aレンジで最大電流 \( 1\,\mathrm{A} \) を測定する場合、シャント抵抗 \( R_1 \) とメータ本体に流れる電流の比率が \( 0.5\,\mathrm{A} : 0.5\,\mathrm{A} \)(つまり1:1)になるように設計する。
- 3Aレンジで最大電流 \( 3\,\mathrm{A} \) を測定する場合、シャント抵抗 \( R_2 \) に流れる電流とメータ本体に流れる電流(0.5 A)の比率は \( 2.5 : 0.5 = 5 : 1 \) になるように設計する。
- 並列回路の電圧降下は同一なので、\( r \) と \( R_1 \)(または \( R_2 \))に流れる電流の比から抵抗比を導ける。
- 設問では、このような考え方から \((\gamma), (\delta), (\epsilon), (x)\) に当てはまる式を選び、最終的に正しい番号を答えさせる形式になっている。
STEP2. 数値を代入して計算
- 1Aレンジ時
全電流 \( I = 1\,\mathrm{A} \) のうちメータ電流は \( 0.5\,\mathrm{A} \)、残り \( 0.5\,\mathrm{A} \) がシャント抵抗 \( R_1 \) に流れる。
よって \( \frac{I_{R_1}}{I_M} = \frac{0.5}{0.5} = 1 \)
並列回路なので電圧降下は同じとなり、
\[
I_{R_1} \cdot R_1 = I_M \cdot r
\quad\Longrightarrow\quad
R_1 = \frac{r \cdot I_M}{I_{R_1}}
\]
ただし、本問題は数字そのものよりも「抵抗の比率」を示すことが多いので、最終的な式としては「\( R_1 \) はメータ内部抵抗 \( r \) と同程度」の関係が得られる形になっています。
- 3Aレンジ時
全電流 \( I = 3\,\mathrm{A} \) のうちメータ電流は変わらず \( 0.5\,\mathrm{A} \)、残り \( 2.5\,\mathrm{A} \) がシャント抵抗 \( R_2 \) に流れる。
よって \( \frac{I_{R_2}}{I_M} = \frac{2.5}{0.5} = 5 \)
並列回路なので、
\[
I_{R_2} \cdot R_2 = I_M \cdot r
\quad\Longrightarrow\quad
R_2 = \frac{r \cdot I_M}{I_{R_2}} = \frac{r}{5}
\]
つまり \( R_2 \) はメータ内部抵抗 \( r \) の 1/5 程度、という比関係が分かります。
- 総合抵抗(多重レンジ計全体の内部抵抗)
1Aレンジ時は \( r \) と \( R_1 \) が並列になった値、3Aレンジ時は \( r \) と \( R_2 \) が並列になった値を全体抵抗とします。このときの計算結果を整理すると、選択肢として与えられた\((\gamma), (\delta), (\epsilon), (x)\) が確定します。
STEP3. 答えを導く
上記の考察を踏まえ、選択肢を検討すると「(5)」の組合せ(\(\gamma = R_1\)、\(\delta = R_1 + R_2\)、\(\epsilon = \frac{10}{R_1 + R_2} + 1\)、\((x) = \frac{25}{9}\))が正しいことが分かります。これが最終的な正答です。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- 直流電流計を複数レンジで使用するためには、メータ内部抵抗 \( r \) とシャント抵抗 \( R_1, R_2 \) の組合せで電流分担を調整する点がポイント。
- 各レンジでの流れる電流比をもとに、並列回路の電圧降下が等しいことからシャント抵抗値を求める考え方を理解する。
- 最終的に内部抵抗の合成値が求められるが、問題により「式の形」が問われる場合と「数値」が問われる場合があるため、両方に対応できる計算法を身につける。
苦手意識を持ちやすい分野ですが、電流計の内部構造とシャント抵抗との役割を整理すると理解しやすくなります。ぜひ多くの問題に触れて、慣れていきましょう。