第三種電気主任技術者_平成23年度理論_問16

LC共振回路の振動電流に関する問題
問題文(要約)
充電されたコンデンサとインダクタを直列接続し、スイッチを閉じた瞬間から発生する振動電流 \( i(t) \) の波形、および最大電流値や振動周期を問う問題です。コンデンサの静電容量は 300\(\mu\mathrm{F}\)、インダクタンスは 30\(\mathrm{mH}\)、初期コンデンサ電圧は 100\(\mathrm{V}\) と与えられています。
重要度:必ず理解
LC回路の基礎である「振動現象」「エネルギーの変換」「共振角周波数」などを理解するうえで必須の問題です。試験でも頻出であり、ここは確実に得点源にしたいところです。
出題意図とポイント
- LC回路の共振周波数や振動周期の計算に関する理解度を確認したい。
- 初期にコンデンサに蓄えられたエネルギーがインダクタとやりとりされるため、最大電流値はコンデンサ初期電圧から求まることを確認する。
- 振動電流の波形は初期条件(コンデンサに電荷があり、インダクタ電流がゼロ)により決定される。
正答番号
- (a)の波形:1
- (b)の組み合わせ:4
解法の手順
STEP1. 基本の公式等を確認
LC直列回路で抵抗が無視できる場合、角周波数 \( \omega \) は
\[
\omega = \frac{1}{\sqrt{LC}}
\]
で表されます。また、周期 \( T \) は
\[
T = 2\pi \sqrt{LC}
\]
となります。
さらに、コンデンサが初期電圧 \( V_0 \) で充電された状態からスイッチを閉じた場合、コンデンサに蓄えられたエネルギーは
\[
E = \frac{1}{2} C V_0^2
\]
となり、最大電流 \( I_\mathrm{max} \) はインダクタエネルギー
\[
\frac{1}{2} L I_\mathrm{max}^2
\]
と等しくなるため、
\[
I_\mathrm{max} = \sqrt{\frac{C}{L}}\, V_0
\]
で求まります。
STEP2. 数値を代入して計算
- \( L = 30 \times 10^{-3}\,\mathrm{H} = 0.03\,\mathrm{H} \)
- \( C = 300 \times 10^{-6}\,\mathrm{F} = 0.0003\,\mathrm{F} \)
- \( V_0 = 100\,\mathrm{V} \)
(1) 振動周期 \( T \)
\[
T = 2\pi \sqrt{LC}
= 2\pi \sqrt{0.03 \times 0.0003}
= 2\pi \sqrt{9\times10^{-6}}
= 2\pi \times 3\times10^{-3}
\approx 2\pi \times 0.003
\approx 0.01885\,\mathrm{s}
= 18.85\,\mathrm{ms}
\]
(2) 最大電流 \( I_\mathrm{max} \)
\[
I_\mathrm{max} = \sqrt{\frac{C}{L}}\, V_0
= \sqrt{\frac{0.0003}{0.03}} \times 100
= \sqrt{0.01} \times 100
= 0.1 \times 100
= 10\,\mathrm{A}
\]
STEP3. 答えを導く
- (a) 振動電流の波形は、\( t = 0 \) で \( i = 0 \) から始まり最初に正方向へ最大値をとる正弦波形なので、選択肢(1) が正しい。
- (b) 最大電流は 10\(\mathrm{A}\)、周期は約 18.8\(\mathrm{ms}\) なので、組み合わせは (4) が最も近い。
まとめ
今回の学習ポイントのまとめ
- LC共振回路の基本式 \( \omega = 1/\sqrt{LC} \) を用いて振動周期を正確に求められるようにしましょう。
- 初期エネルギー(コンデンサ)が振動中はインダクタと相互にやりとりされ、抵抗がない理想回路なら損失なく振動し続けます。
- 初期コンデンサ電圧から最大電流を導く式 \( I_\mathrm{max} = \sqrt{\frac{C}{L}}\,V_0 \) は、エネルギーの保存から理解するとわかりやすいです。